エサウとヤコブ

  アブラハムの息子イサク(英語でアイザック)の息子は双子でした。エサウとヤコブ。兄のエサウは狩りが好きで毛むくじゃら、頭もあまり良くありませんでしたが、父のイサクに気に入られていました。ひょろひょろの優等生ヤコブ(英語でジェイムズ)は、母のリベカ(レベッカ)に気に入られていました。ある日、ヤコブは、うまく兄をだまして長男の特権を奪ってしまいます。


 あまつさえ、目がわるくなってきて、気力もなくなり、死に瀕した父から、エサウのふりをして(羊毛をかぶって毛むくじゃらに変身した)生前譲与財産をすべて奪い取ってしまいました。どこかで聞いた話ですね。


 エサウの怒りをおそれたヤコブは、逃亡の旅に出ます。途中で天使の梯子(ヤコブの梯子と呼ばれている)を見たり、天使と相撲を取ったりして祝福をもらったヤコブは、財産を殖やしてエサウに謝罪し、エサウはそれを受け容れます。

エサウがいかにだまされたかというと、そもそも狩りが大好きだった彼は、長子の権利があるにもかかわらず、あまりそれに関心を持っていませんでした。昔の日本でもそうですが、きょうだいは長子がいちばん大事にされ、ほかは補欠あつかいです。ありとあらゆる権利(財産や名誉など)、父から譲られるモノはすべてもらえる立場にあったんです。なので、これを、まったくもらえない立場にいた次男のヤコブが不満に思うのは当然でしょう。双子だけに、よけいにそう思えたかも知れません。


 エサウが狩りから戻ってきたとき、お腹が空いたのでちょうどマメのスープを煮ていたヤコブに、それをくれとエサウが言うんです。「長子の権利と引き換えなら」とヤコブがいい、「今食べないと死ぬ。それぐらいなら権利はやる」とさっさと権利をわたしてしまった、そこがエサウのアホさかげんなんですね。食べたかったら自分で料理すりゃいいだろうに、と思うのはわたしが主婦だからでしょうか。


 こんなアホな子をひいきするイサクも、やはり欠陥人間です。アホな子ほどかわいいんでしょうが、親の愛がないとひねくれるのは誰しも同じだと思いますよ。ヤコブの気持ちもよくわかる。

 しかし、だからと言って羊毛をまとって兄のフリをし、父をだまして財産をぶんどるのは、人としてどうなんでしょうか。一説によると、アホ兄が一族の長になるのを懸念したリベカが、イサクと共謀してハメたって話もありますが……。

 ヤコブの梯子というのは、西洋では有名な逸話です。ヤコブが旅の途中で野宿し、そこで、天使が天に届くはしごを上り下りする夢を見る、という他愛もないお話。


 ただ、わりと有名な逸話で、いろんなところで使われています。
 たとえば、雲の隙間から光が差すことを「ヤコブの梯子」とか呼んだりしますし、80年代のヒューイルイス&ザ・ニュース(映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のテーマソングを歌った人)の楽曲にも、『ジェイコブス・ラダー(ヤコブの梯子)』という名称のものがあります。


なぜヤコブがジェイムズか。


 ラテン語のヤコブス(Jacobus)→ヤコムス(Jacomus)→古フランス語のジャムス(James) →イングランドでのジェームズ(James) 英語にはジェイコブ(Jacob)とジェームズ(James)
となりました。
英語=ジェームズ、フランス語=ジャック、ドイツ語=ヤーコプ、イタリア語=ジャコモ、ラテン語=ヤコブス
 のように伝わり方などで、各国まちまちですね。

 ちなみに、いまのイスラエルは、ヤコブが先祖。アラブ諸国の先祖はエサウということになっているそうです。昔から仲が悪かったのね。

 こちらには、別の角度から書かれた他の作者のブログもあります。ご参考までに。

https://note.com/satonao310/n/n58dbeabb95a0

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