出エジプト記(後編)

  三: ファラオとの交渉

 ということで、モーゼはアロンといっしょにファラオの元へ行きました。前のファラオは死んでいたので、例の殺人事件は発覚していませんでした。
 今のファラオに面会したモーゼは、この国を去りたいと申し出ます。すると今のファラオは、これはぜったい、イスラエル人が仕事を怠けたくて言い出したウソだ、と思い込み、藁を使わずにレンガを一定量つくれ、という無理難題をふっかけます。抗議すると、仕事量が増えました。とんだブラック企業です。


神さまの命令通りにしたのに、民衆が苦しんでいる。ワケがわからないモーゼは、神さまを責めますが、神さまは「だいじょうぶだ、無事脱出できる」と繰り返すのみでした。
 てなわけで、もう一度ファラオに面会することになりました。ファラオはぜったいに譲らないので、モーゼの兄アロンが、神の言うとおりの奇蹟を行いました(杖をヘビに変えたんです)。しかし、ファラオのお気に入りの魔術師たちも、同じことをしたので、ファラオは馬耳東風。


 そこで神はモーゼに言いました。
「ナイル河の川上の水を杖で打つと、水は血に変わる。川の魚は死に、川は悪臭を放つ。エジプト人はナイル河の水を飲むのを嫌がるようになる」


 そのとおりになってしまいましたが、やはり魔術師たちが秘術を用いて同じ事を行ったので、ファラオはガンとして言うことを聞いてくれませんでした。
 ナイル河が血になってから、七日経ちました。神はモーゼに言われました。
「ファラオに言いなさい。もし、イスラエル人を解放しなければ、あなたの領土全体にカエルの災いを引き起こす。ナイル河にカエルが群がり、あなたの王宮を襲い、寝室に侵入して寝台にのぼり、さらに家臣や民の家にまで侵入し、かまどやパンのこね鉢にも入り混む。カエルはあなたも民もすべての家臣をも襲うだろう」
 そのとおりになってしまいましたが、やっぱり魔術師たちが同じ事をしました。しかし、今度はファラオも音をあげて、さっさと出て行けというので、モーゼは満足して帰りました。とたん、カエルが全滅したので、人々はその死骸を幾山にも積み上げ、国中に悪臭が満ちました。ファラオは一息つくヒマができたので、心を頑迷にし、またモーゼとアロンの言うことを聞き入れなくなったのでした。何度やってもダメなときって、ありますね。
あと、ぶよが襲って来たり、あぶが襲って来たり、疫病が流行ったり、雹(ひょう)が降ったり、イナゴが襲って来たり、暗闇になったり、エジプトはさんざんな目に遭いますが、ファラオは決して応じません。
国の責任者としてどうよ、と思うけど、プライドがあったのかな。
  最後に、神は死の天使をエジプトにつかわし、エジプトのすべての長男長女を死なせると宣言。この月をイスラエルの正月として、年の初めにするようモーゼに命じました。エジプト人の初子は死にますが、イスラエル人は、家に印をつけているので大丈夫というわけ(これを過越の祭、と聖書では呼んでいます)。

こうして長男を失ったファラオは、強烈に反省して、イスラエル人を脱出させる許可を出してくれました。

 四:海が割れるのよー 道が出来るのよー♪ &『十戒』

 神は夜は火の柱、昼間は雲の柱になって、約束の地へとイスラエル人を導きます。
 無用な戦いを避けて葦の海に出ると、その背後に、エジプトの軍勢が!


 実は、イスラエル人の労働力を惜しんだファラオが、彼らを連れ戻そうとしたのでした。
モーゼは神に助けを求めます。神はモーゼに杖を掲げろと命じます。そのとおりにすると、海が真っ二つに裂け、底に道が出来ました。イスラエル人はそこを無事に歩いて脱出。その背後を追うエジプト軍勢は、海が元どおりになったので溺死してしまいました。


 その後、モーゼは次々と奇蹟を行います。苦い水を甘くしたり、マナと呼ばれる天のパンを降らせたり。あるいは、岩を杖で叩いて水をほとばしらせたり。
 途中で戦争もありましたが、とにかく長期にわたって、砂漠をさまようイスラエルの人々。神はやがて、有名なシナイ山へとみなを導きます。


 モーゼはこのシナイ山で、映画のタイトルにもなった『十戒』を神から石版としていただきます。
実はこの十戒、メソポタミアのハンムラビ法典にそっくりだということが、聖書考古学で証明されています(またしても盗作ですな!)


 そのことから、聖書は西洋のものではなく、もとはオリエンタル(中東・東洋)のものであった、という考え方もあります。
こうして石版を与えられたモーゼは、いったんは帰りますが、帰って見るとイスラエル人たちは、ヤハウエ神以外の神(金の子牛)を祀っていたので、モーゼは怒って石版を壊してしまいました……。
 ともあれ、もう一度シナイ山に登ったモーゼは、再度石版を貰い、アークと呼ばれる聖櫃(箱)の中に、それを入れました。一説には、その石版を手にしたものには、絶大な権力が手に入るそうで、その争奪戦をモチーフにしたのが映画『レイダース:失われたアーク』ですね。


エジプトを脱したイスラエル人たちは、かずかずの戦いを経て、ぶじ、(神の)約束の地にたどり着きました。その後、異邦人ルツが姑のナオミと仲良くした逸話(わたしの名前なおみの由来)があり、ペルシャ(現イラン・イラク)がイスラエルと戦い、イスラエルと険悪になったこと、預言者(神の言葉を預かる人)と呼ばれるサムエル(英語でサミュエル)という人が出て、サウルが現れ、羊飼いのダビデが出て来ます。
次回は、ダビデ(デイビット)とヨナタン(ジョナサン)の友情物語です。お楽しみに。

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