その後の聖書あれこれ

その後の聖書あれこれ

 ダビデの話の前に、こんな話があります。サムソンとデリラの話です。
 実はイスラエルは、一時期ペルシャに支配されていたことがあり、サムソンはイスラエルのなかではかなり力のある部族の一員でした。生まれたときに、神から、
「髪を切るな、切ったら怪力が失われる」
 と言われて、ずっと髪を切らずにいました。
 ペルシャとの戦争で、自慢の怪力で大活躍したサムソンですが、その力の秘密をデリラというペルシャの女に探られてしまいます。
 色仕掛けでせめられたサムソンは、当初ウソを言ってごまかしますが、どうにもごまかしきれず、ついに真実を話してしまいます。
 そこで髪を切られ、怪力を失ったサムソンは、目をえぐられて牢に入れられますが、牢に入っている間に髪が伸び、怪力を取り戻します。そしてペルシャ人の集まる神殿で、柱を折って神殿を壊し、自分もろともペルシャ人を殺してしまうのです。

 そんなふうに、ペルシャ人とイスラエル(ユダヤ人)は仲がよくなかったんです。その支配をうとましく思っていたサムエルという預言者は、サウルという人に油を注いで王にします。サウルは戦争で大活躍しますが、だんだん、精神状態がおかしくなってきました。おそらく、初めての王ということもあり、戦争のプレッシャーがあったんでしょう。
 そこで、見目麗しいダビデという羊飼いが、竪琴を弾いて彼を慰めることになりました。ところが、そんな折、ペルシャからゴリアテという巨人が現れ、自分と勝負しろと言ってきたのです。もし、負けたら国が奪われる――。ダビデは単身、立ち向かいます。
 羊飼いだった頃に、投石でオオカミや野獣をやっつけたことがあったので、ゴリアテだって倒せると思ったのです。しかし、ほとんど素手だったので、力自慢で巨人のゴリアテは嘲笑しました。
 そして勝負の時。
 この、息づまる一瞬を、ミケランジェロは「ダビデ像」に描いています。手には石を握りしめ、相手を睨み付ける美男子ダビデ。下半身モロ出し(こら)。
 相手が動くその瞬間、ダビデは石を投石器で投げつけました。
 たかが石。ばかばかしいと嗤っていたゴリアテの、ちょうど眉間にぶち当たります。
 そこは人間の急所のひとつでした。ゴリアテは、どうっと倒れて死んでしまいました。

 ダビデは一躍、英雄になりました。サウルの息子ヨナタンは、特にその功績を喜び、いっしょに手を取り合って祝いました。
 ところが、サウルは面白くなかったんです。王の自分より、ダビデの方が人気者なんで……。
 だんだん、精神状態も悪化していき、 サウルはダビデを殺そうと思い始めました。
 ヨナタンは、必死でとりなします。なんとか、ゆるしてやってください。
 身の危険を感じていたダビデは、すでに隠れていました。ヨナタンは、使いの者に手紙をつけてよこします。自分は狩猟に出ようと思う。もし、サウルがまともだったら、矢を自分の近くに放つようにする。でも、サウルが君を殺そうとするなら、矢を遠くに飛ばしていこう。
 ヨナタンは、親愛なる父の真意をたしかめます。しかしサウルの精神は、すっかり荒廃していました。ヨナタンは絶望し、引き裂かれる思いで狩猟に出かけます。そして、矢を遠くに飛ばして、待ち合せ場所に隠れていたダビデに警告するのです。
「矢は向こうに行ったぞ、取りに行け」
 従者に命じるヨナタン。ひとりきりになったのをみはからって、ダビデが隠れていたところから出て来ます。そしてふたりは、しっかと抱きあい、涙ぐんで別れを惜しみました。

 サウルはその後、死んでしまい、ダビデが民衆の歓呼のもと、王位に就きます。その息子が賢王にして魔術師ソロモンで、イスラエルの黄金時代は、ここに始まるのでした。
 ちなみにソロモンの裁判で有名なのが、大岡裁判のモトネタにもなったと記憶している子どもの争奪戦です。莫大な財産を相続した子どもがいて、その母親を名乗る人物が二人出て来ました。どちらの言い分ももっともらしく、どうしてもホンモノが誰か判りません。ソロモンは、子どもをふたりで引っ張り合って、子どもを取れた方がホンモノだと言いました。
 いよいよ子どもが引っ張られていくと、母親同士、力がこもるあまり、子どもは痛さのあまり泣き出してしまいました。片方が思わず手を緩め、もう片方の手に子どもが渡ったたとたん、ソロモンは言いました。
「手を緩めた方がホンモノ。だって、ホントの母親なら、子どもが痛いのを黙っているわけがない」
 それが賢王であると言われる一つの例だったりするわけです。

その後、イスラエルは分裂、民衆がバビロンに捕囚されたりします。時代は下っていきまして、ダニエルがシャーロック・ホームズばりの推理をする話もあります。その当時のバビロンでは、偶像がものを食べるとマジに考えられていて、ダニエルが、床に灰を撒いて偶像のなかに潜んでいた人々の足跡を見つけ、詐欺を見抜くわけです。この話は、旧約聖書続編に書かれていますが、当時の人々の考え方が面白くて、わたしはけっこう好きですね。
ということで、旧約聖書の話は、ざっとこんな感じです。ほかにもいろいろ、旧約聖書には載ってますが、わたしは個人的に好きじゃないので紹介しません(いいのか)。

より詳しくは、聖書と神話の話を挿絵付で紹介しているこのサイトが参考になるかも知れません。
https://note.com/satonao310/m/m60df1e909421

 長々、お付き合いいただき、ありがとうございました。
 リクエストがあるなら、新約聖書の話も書きますが、こっちはお話自体がちょっと説教くさいので、受胎告知とかはともかく、説教くさいのがお嫌いな方にはオススメしません。ことわざになった、「豚に真珠」「笛吹けど踊らず」「砂上の楼閣」「目からウロコ」は、新約聖書から出ていますが、興味ありますでしょうか……。ちょい、不安だなあ。(了)

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