中国新聞投稿作品より

整形外科へ肩こり治療に行った。トウイモやズイキが広島では90年代には売られていたのに、今では売られていないという話をしたら、鍼の先生が「患者からもらっている」と打ち明けてくれた。 常連の患者は高齢者ばかりである。年下の鍼の先生に対しては、孫に対するような親しみを感じるのだろう。同い年で愛嬌たっぷりな先生のことが、羨ましく感じた。

そして思った。患者からのプレゼントは、それだけ尽くしている先生への患者のねぎらいや、感謝の気持ちを感じる。いずれ死ぬ身であるからこそ、自分のことを忘れないでほしい、というメッセージもあるかもしれない。

 それに高齢なのは患者ばかりではない。整形外科の主治医はもう70代後半。鍼の先生は50代後半だ。トウイモやズイキがなくなったように、独特の味のある医者も町からいなくなっていく。

それを思うと医療への感謝と将来への不安を感じるが、格言にもあるように「もうだめだ」は「まだまだ」。未来はまだ明るいと信じたい。
(了)