初恋のシャッターチャンス

『夕焼け雲を追いかけて』 #02

あの子がやってくる。ぼくは胸がドキドキしてくるのを感じた。修学旅行先にあった、土産物屋から歩いてくる。

すぐ目の前をとおりかかった。ぼくはじっとり汗ににじむ手の中のカメラを差し出し、

「あの、キミを撮っていいですか?」

「いいけど、先生が来ちゃった」

あの子は、無邪気な様子で言った。

こんなところを先生に見られたら、カメラを取り上げられるかもしれない。ぼくはあわてて服の下にカメラを隠した。

先生がぬうっと現れた。まだ来ていなかったらしい。先生は、ジロリとぼくをにらんで、そのままあの子と立ち去った。

ぼくの初恋は、告白できなかった。

来ちゃった、というのがその子の故郷では、いらっしゃった、という意味の敬語だと知ったのは、大人になってからである。

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