「これからの時代は、サッカーですよ」
と言うと、悪魔は白いボールを取りだした。
「これは、サッカーでスターになれるボールなんです」
おれは、ボールを眺めた。ずっと憧れていたあのスポーツを、できるのか?
「だけど……」
おれは、自分の足をながめた。
「おれ、車椅子生活なんだけどなあ……」
#お題 #憧れのサッカー #即興小説トレーニング
「これからの時代は、サッカーですよ」
と言うと、悪魔は白いボールを取りだした。
「これは、サッカーでスターになれるボールなんです」
おれは、ボールを眺めた。ずっと憧れていたあのスポーツを、できるのか?
「だけど……」
おれは、自分の足をながめた。
「おれ、車椅子生活なんだけどなあ……」
#お題 #憧れのサッカー #即興小説トレーニング
とうとうその日はやってきた。エヌ氏は、残念そうに古いがま口の財布を見つめた。
この財布は、猫の絵が描いてある小銭入れだった。
「いよいよ捨てなければならないんだな……」
この財布に百円玉を3個以上いれたら口がひらいてしまう。
しかし、エヌ氏には愛着があった。猫が好きだったこともあるが、
このがま口を手に入れたときの、あのお祭りの屋台を思い出すと、
とても捨てる気にはなれなかったのだ。
しかし、使い物にならない財布は、捨てるしかない。
エヌ氏は、断腸の思いでその財布を河原に捨てた。
数日後、河原からエヌ氏の子どもが帰ってきた。
「お父さん、変な人がこれを売ってたよ。この中に小銭を入れると
増えるんだって!」
見れば、捨てたはずの小銭入れである。
エヌ氏は子どもからそれをもらい受けた。
そして、小銭を入れた。
その瞬間、財布はその小銭を入れたまま、消えてしまった。
「やーいやーい、おまえのかーちゃんでーべーそ!
へなちょこ童貞カボチャ!
てめえのクソ食って死んじまえ
なに、クソがうめえだって?!
すげーな、羨ましくねーけどな。
なに、おれがいじめっ子だって?
へー、そーなんだ、へー。
そういうおまえは、
何もしなくても、うらなり顔だな。
その顔を見てると、笑えてくるぜ。
生きているギャグ、それがおまえだ。
なに?
はあ?
うるさいんだよ、おまえごときが。
おれのなにがわかるんだ。
え?
うらなりのくせにナマイキだぞ!
おまえのためを思って
言ってるんだ!
いや、なにさまって言われてもな。
おれはオレサマだ!
おまえは黙ってついてこい!
オレの頭が悪いからヤだって?
おまえ、人のこと言えるのかよ。
なに、
テストで百点取ったって?
縄跳びひとつ出来ないくせに。
ナマイキだぞ、1回ぐらいちゃんと
運動会で1位を取って見やがれ。
おまえ、いるだけで迷惑なんだよ。
めざわりなんだよ。
近づくな、うらなりがうつる!
こっち向くな。
たのむから、べそをかくんじゃねえ。
おまえ、それでも男なのか?
泣きさえすれば片付くとおもってやがる。
その前についているのは
しょぼい飾りなのかよ。
どうしておまえは、そんなに青びょうたんなんだ。
青白い顔に赤い服ってのもどうかと思うぜ
きつい度のメガネなんかしやがって
どこが悪いんだ?
顔か?
おい、来るなよ。
はいはい、お説ごもっとも。
なに、天罰がくだるって……
すごいすごい。めちゃすごい。
話が高等すぎて頭が痛くなるぜ。
うん、すごい。
すごくどうでもいい。
泣いているけど、説得力もある。
そんけーするぜー
……なんて、
言うとでも思ったのか。
男は、ホンネとホンネをぶつけ合うもんだ!
ムダにひょろひょろしやがって。
いつかおれに逆襲する、だって?
あははは、うるせえ。
夢でも見てな」
と言っていたいじめっ子は、
いまはおとなになって
会社の上司(いじめっ子の父)にいびられている。
怪盗Xからの挑戦状が、
大富豪ロスのところへ叩きつけられた。
『一億円の涙、ちょうだいします」
さっそく警察が呼ばれ、名探偵上条が呼ばれた。
「一億円の涙とは、なんですか」
上条は、ロスにたずねた。
でっぷり太ったヒキガエルのようなロスは、
たるんだ頬をふるわせながら、
「わたしが一億円はらって手に入れたダイアモンドだ。
涙の形をしていて、世界でたったひとつしかない」
上条はうなずき、警察に警備を命じた。
「この挑戦状によると
今晩、ヤツが現れるという。
しっかり、警備をして欲しい」
「上条くん、だいじょうぶなの?」
上条の恋人、真里亜は、警備に付きながら
心配そうに訊ねる。
「だいじょうぶ。きみとぼくとはいつだって
コンビを組んで、事件を解決してきたじゃないか。
今度だって、怪盗Xの鼻を
明かしてやるからね」
「だといいけど……」
真里亜は、長いまつげを伏せた。
「今度ばかりは、上手くいく気がしないのよ……」
さて、当日の、怪盗Xが現れる夜8時になった。
警官たちが、ダイアモンドのある金庫の前で、
ずらりと並んで待ち構えている。
「わははははははは」
なんだか昭和な悪党笑いをあげながら、
怪盗Xが現れた。
白くて長いシルクハット、白いマント。
仮面をつけて、ほとんどコスプレ。
怪盗Xは、手に持った催涙ガスを投げつけた。
警官たちは、手もなくヤラれてしまう。
なぜか金庫のかぎも、怪盗Xは番号を知っていた。
涙をボロボロ流しながら、名探偵は怪盗Xにとびかかる。
怪盗Xは、ハンカチを当てながら、それを軽くかわす。
ダイアモンドをつかんで、逃げて行ってしまった。
面目を失った名探偵が事務所に戻ると、
真里亜が神妙な顔でうつむいている。
「上条くん。話があるの。わたし、この事務所を辞めます」
「なぜだ!? 今度の失敗で、僕に嫌気が差したのか?」
「違うの。実は私が怪盗Xなの。
あのダイヤモンドは呪われていたから、ロスから奪うしかなかったのよ。ロスは父の親友なの」
初めて恋をした。
無精髭、短い金髪、透き通る空のような青い瞳、
たくましい胸の勇者さま。
彼は、あたしを助けに来てくれた。
宗教帝国のA国から、国境を越えて
となりの自由の国へ、逃がすために。
ぼくの父親は錬金術師で
先に亡命していた。
ぼくは人質にされていたんだ。
彼は、いともたやすく
見はりをノシて
ぼくの手を取った。
そのときの手のぬくもりが
あたしのハートを射ぬいた。
あたしは、導かれるままに
拷問部屋から逃げだしたんだ。
「このあたりの土地は、
わたしがよく知ってる。
わたしは、このあたりで育ったのだ」
彼は、そう言った。
そのとおりだった。
追ってくる敵の先を走る彼は
確実に、敵をかきまわしていた。
だけど、国境近くになって
父がその向こうで待っているのを見たとき、
あたしは急に逃げるのがイヤになった。
逃げている間は、彼といられたのだ。
彼に守られ、彼の先導に従っていればよかった。
いつまでも、彼のそばにいたかったんだ。
国境近くで立ち尽くすぼくを見て、
父が、呼び掛ける。
「ウィーナ! 走れ、走ってこっちへやってこい!」
彼も腕を取ってあたしをせかす。
「早くウィン、国境を越えればこっちのものだ!」
あたしは、歩みを止めて彼を見あげた。
「行きたくない」
彼は目を丸くしている。
「このままつかまりたいのか?
つかまったら、どんな目に遭わせられるか……
今度は拷問だけじゃ、すまない!」
「あなたとわかれるぐらいなら、死んだ方がましよ!」
あたしは叫んだ。
「なにをバカなこと言ってる。
お父さんが、悲しむぞ」
彼が諭すように言う。
あたしは、彼の胸に飛び込んだ。
「このまま、ずっと逃げようよ。
あなたとなら、生きていける」
彼はそっとぼくを押しのけた。
「悪いけど、きみのワガママに
つきあってられない」
あたしの恋は実らなかった。
「もしもしカメよ カメさんよ
世界のうちでおまえほど
歩みののろいものはない
どうしてそんなにのろいのか」
ウサギがカメをからかって、カメに逆襲された話は有名だが、
そのウサギがすっかり面目を失い、同じウサギ仲間から
村八分になってしまった話はご存じだろうか。
村八分になったウサギは、
ある日、オオカミを発見した。
すぐそばに、オオカミがやって来ていることも知らず、
仲間のウサギたちは、草を食んでいる。
ウサギは、仲間を助けるために、
長老にこう言った。
「どうです、No1. 試験というのを、
やってみませんか」
長老は、うさんくさいという目になった。
「カメに負けるようなヤツに、
わしらが負けるというのかね?」
「やってみなければわかりません」
ウサギは、必死でことばを重ねた。
「向こうの山のふもとまで、
みなさんごいっしょに、
駆けていきましょう」
「ばかばかしい」
長老は、一笑に付したが、
若いウサギたちは、その挑戦を受けたい、
と言い出した。
カメに負けるようなウサギに、
負けるはずがないと思ったのだ。
位置について、よーい、どん。
村のウサギたちは、先をあらそって
走り始めた。
ぴょんぴょんと走るそのさまを見て、
オオカミは慌てた。
「待て~~~~」
オオカミが追ってくる。
村のウサギたちが、驚いて耳を立てた。
「おまえらを食ってやる!」
オオカミは、
ヨダレを垂らし、
凶暴な目をして、
ウサギたちに迫ってくる。
小さなウサギが転んでしまった。
オオカミは、荒い息をして迫ってくる。
小さなウサギは、泣きそうになっている。
村八分のウサギは、必死で打開策を探し、
ついに見つけた。
くっつき虫と呼ばれる小さなトゲトゲ実。
それを、オオカミのリーダーめがけて
投げつけたのだ。
リーダーの目を直撃するくっつき虫。
「痛い、痛い!」
オオカミは退散した。
「きみこそNo.1だ!」
長老がそう言った。
村八分のウサギは、名誉挽回し
いまでは倖せに過している。
戦国時代の二重人格
藤本誠道は戦が大好きだ。戦は剣の技術と体力と、運がすべてを牛耳っている。血わき肉おどる
相手との戦闘もたまらない。鉄のにおいと生臭い血しぶき、鼻がもげるような馬の体臭、汗のにおいも男らしい。
いつか天下を取るような大将に仕えたい。
そして、自分のすべてを捧げるのだ。そのための準備はおさおさ、怠りない。
しかし満月になると、藤本はなぜか山奥に行く。そのときの藤本は、
武士ではなく、心優しい木こりとして、村人を助けているのだ。
冗談抜きで木こりとしての藤本は、ケガをした動物にも
手を差し伸べるような人間だった。
その満月の時の木こりに、恋をした女がいた。
満月がはじまると、どこからともなくやってくる藤本の謎に魅せられ、
なんとか彼の関心を引こうと、
髪をとかしてみたり
櫛やかんざしで飾ってみたり
髪油でにおいをつけてみたりした。
しかし、満月が終わると同時に、木こりはどこかに消えていく。
女は、木こりのあとをつけた。
ふしくれだった木の根や、足元をじゃまする下草にもめげず、
女は木こりを追いかける。
朝日がさしこんでくる山奥で、木こりはもとの藤本に戻る。
物影にかくれていた女は、
鎧を身につける藤本の足元に走り寄り、ひれ伏した。
「わたしも連れて行ってください」
女はかき口説いた。しかし藤本には、この女のことが
さっぱりわからない。
足で蹴飛ばすと、藤本は戦場へと出て行く。
そして、戦いがはじまった。藤本は、八面六臂の活躍をして、
戦場での賞金首となった。
命を狙われ、藤本は血みどろの鎧を誇らしげに見せながら、
次々と、兵士を倒していく。
女が、藤本の馬に駆け寄ってきた。
「藤本さま、どうか元に戻って!」
女が必死で言う。
「ええい、じゃまだ!」
藤本が、女を馬で蹴倒そうとしたそのとき、
木こりとしての藤本が目を覚ました。
「おゆうさん!」
女と木こりは、戦場を逃げだし、遠く山の彼方へと駆け去った。
やあ、ぼく火星。
英語では、ギリシャ神話の軍神マーズの名前がついているよ。
戦いに関しては、向かうところ敵なし。
ぼくに献げ物をして戦いに望めば、百戦百勝だよ。
僕は太陽系の4番目の惑星で、地球とかなり似ているんだ。
重力は地球の0.4倍。砂ばかりだけど、昔は運河があって、
超古代文明が栄えていたんだよ。
火星を縦横無尽に走り回る運河には、
きみょうな生物たちが住んでいた。
超古代文明の人々(火星人)は、その生物たちをつかまえて
料理して食べていた。
その生物はたいへん賢くて、
狩りの相手としては絶好だった。
火星人たちは、その生物に「トスク」という名前をつけて、
計略の限りを尽くして
狩りをし続けた。
ある日、超古代文明を築いた人々のところへ
猫の顔をした異星人たちが現れて
トスクを横取りし始めた。
トスクはそれほど、美味だったんだ。
トスクがそんな形をしていたかって?
そうだなあ、きみたちが、
火星人ということばにイメージするのと
同じ恰好だったな。
つまり、頭がでかくて、
手足がながいタコそっくりの動物。
ちなみに火星人は、
恐竜みたいな顔をしていた。
肌が青くて、鼻がほとんどなくて、
ゴツゴツした突起が出ていたんだよ。
火星の重力は地球よりも少し小さいから、
トスクも、火星人も、ふつうより力は弱かった。
猫の顔をした異星人たちは、
トスクや火星人たちと争っても
勝てる、と踏んで、侵略をはじめた。
しかし、火星人もトスクも、協力し合って
猫の顔をした異星人たちに対決した。
ほら、敵の敵は味方ってやつ。
とくに、トスクの活躍はめざましかった。
火星人たちが、この戦争に勝ったら、
もう狩猟はやめるって言ったからさ。
異星人たちは、トスクの活躍によって
元いた惑星へと追放された。
ところが、火星人は約束をやぶり、
トスクを狩りはじめた。
トスクは絶滅し、火星人も飢饉と病気がはやって
絶滅したんだ。
きみたちも、気をつけてね。
鬼と村人
赤鬼の子どもが病気になった。鬼は、怒った。
隣の村へいくための、大きな橋が、濁流の川にかかっている。
赤鬼は、ざんぶと川に飛び込むと、
ギシギシ、ギシギシ、橋の支柱を揺さぶり始めた。
橋は、きしみながら揺れ動く。
たまたま、通りかかった村人が、
叫び声を上げて、村へと走り去っていった。
村人たちが、手にクワやスキを持ってやってきた。
「赤鬼! なんてことをする!」
村長がどなった。
「その橋がなくなったら、隣村へ
作物を売りに行けなくなる!
壊すのはやめろ!」
赤鬼は、手を止めようともしなかった。
ななめの支柱は、バラバラになり、
そのまま川の中に崩れ落ちていった。
「わかったか!」
赤鬼は、ポタポタ髪からしずくをおとした。
すさまじいどら声だったので、
近くの木々がしばらく震え上がったほどだった。
「オレの子どもの復讐だ!」
赤鬼は、壊れた橋を、さらにその太い腕で
崩しながら言った。
「なにが復讐だ、わしらは
なにもやっとらん!」
長老が、力強い声でがなると、
赤鬼は、ギロリと目を剥いた。
「オレの子どもが病気になったのは、
この村で、はやっていた病気をうつされたからだ!
この村がぜんぶ、悪いんだ!」
「乱暴は、ゆるさん!」
ひとりの猛者が、前に進み出てきた。
「赤鬼よ、この村は病でひどい目に遭ったのだ。
このままでは、村は亡びてしまう!
そうなるまえに、おまえをやっつけるぞ!」
「まあ、待ちなさい」
長老は、猛者を押しとどめた。
「きみは医者見習いだっただろう。
赤鬼の子どもを診てやりなさい」
猛者は、
「そんな甘いことを」と
長老と激しい口論になった。
「憎しみからは、何も生まれない。
悪に対して善を持って勝利するのだ」
長老は言った。
最終的に猛者は折れ、
鬼の子どもは恢復した。
感謝した鬼は橋をかけなおしたのだった。
キーワードは(鬼+お医者さん)
霧深い村のなか、すべてはぼんやりと真珠色の輝きに満ちていた。おぼろげな影がさし、
そのなかからくっきりと浮かびあがってきたのは、ナイフを腹に刺されたひとりの男……。
「父さん!」
オレは叫んだ。
逃げ去る男、追うオレ。しかし男を取り押さえることができなかった。
手がかりは、死人が知っている。
ネクロマンサーを志したオレは、とある魔術師に弟子入りした。
修行は厳しかった。あるときは、冷たい滝に打たれて気絶しそうになった。
あるときは、山奥の道なき道を、息を切らして走り回った。
魔術師の長すぎる首には、動物の骸骨のネックレスがかかっている。
長い修行生活の後、オレは免許皆伝の身となった。
しかし、その免許は三年更新制で、その三年の間に少しでも
法規に違反していたら、魔術師総会にしめあげられる羽目になる。
オレは、父の死霊を復活させた。
父は、意気地のない表情で、オレの魔法を気にかけていた。
「私は死んだのだ、もう復讐など考えるな」
父は言った。
オレは、納得しなかった。
父から、ムリヤリ犯人の正体と居所を聞きだし、
犯人のもとへと駆けていった。
犯人は、腹黒い顔をした痩せ型だった。
彼は、父の商売敵だった。
父の商売が順風満帆なのをうらやんだのだ。
そんなことで父を殺したのか。
怒りに燃えたオレは、犯人の心臓に、ナイフを突き立てた。
断末魔の叫び、噴き出す血潮。
犯人は死に、オレはそいつを操ることが
できるようになった。
犯人の知識を使って、泥棒をしたり商売道具をダメにしたり。
オレはやりたい放題をしたため、魔術師総会に見つかり、
ネクロマンサー免停となった。
すると、コントロールを失った犯人と
父が、激しいケンカになってしまった。
それを止めようとしたオレは、
自分が死霊となってしまったのだ。
いま、オレは二人の間に挟まれて
グチや悪口を聞かされまくっている。