熱が低いのだから入院せず、わたしたちは隔離療養になる。ただし。
「ホテル療養はムリ」
市はそう説明しました。希望者が多くて用意できないんだってさ。ところが県の説明では「ビジネスホテルで療養をお願いします。十八日の夜八時半から、中区のKビジネスホテルを用意します」、とのこと。
YESかNOか、ハッキリせんかい!
入院したら、カクテル療法というものを施してくれるそうです。夫は、わたしの持病を心配して、環境が変わったら病気が重くなると気を揉んでいました。なので、入院よりも療養を選んだのだと説明してくれました。
わたしは以前、メラノーマで入院したことがあるから、心配しすぎだと思うんだけどねえ。ホテル療養になったため、カクテル療法はナシ。
そのうち県の配送車がうちの前にやって来て、二人組のワイシャツ組がお迎えでごんす。FBIみたいだわー。
夫の持参したボールペンで療養生活への同意書にサインをしたあと、掃除機の吸入口みたいな空気清浄機が運転席から蛇行しているのを眺めていました。自宅から中区のKビジネスホテルまでは、車で一時間程度です。
真っ暗な街を行く配送車のなかを、下着とパジャマ、着替えをバッグに詰め込んだわたしと夫は、ひたすら中区へと向かいます。ホテル側が用意している備品や、持って行かなくちゃならないものについては、市のHPに資料があるのでそれを見ながら準備しました。
コロナでいちばん気になったのは、食事と洗濯なんです。そんなにたくさん、下着を持ってないし、クリーニングも洗濯機も使えないっていうからねえ。食事もおいしくなかったら、療養生活は地獄だぜ。
義母をひとり残すのも気がかりです。心臓が悪いからね。とつぜん具合が悪くなったら、助ける人がいない。それに、夫もわたしもコロナだから、義母もコロナになっている可能性がかなりある。
ホテルまで送ってくれる車の中は狭かったけど、乗り心地はとてもよかった。Kビジネスホテルについたとき、三階で受け付けてくださいと言われ、エレベーターに乗って三階へ。
三階では、ガラス張りの受付が待ち構えていて、健康観察についての説明を受けました。
自宅療養より、ホテル療養のほうが、食事の用意や買い物をせずに済むからラクでいいなと思っていたんですが、いざ用意された部屋へ行ったら、部屋は狭いし壁に穴が開いてる。えらいところに来てしまいましたよ。まあ、清潔だからいいけどさ。