1月16日 ひとしずくの光~連載:夫の入院・退院(終)
病室という名の「観察室」
退院の足音が聞こえてきた頃、暇を持て余した夫の興味は「看護師さんたちの人間模様」へと移っていきました。
彼の報告によれば、病棟の看護師さんたちは皆、親しみやすい(?)コテコテの広島弁を操り、なぜか揃って小柄だったそうです。中でも彼の目を引いたのは、若くして現場を仕切る実力派の看護師さん。年上のスタッフをテキパキと動かす彼女の仕事ぶりは圧巻ですが、ふとした瞬間にノートPCを打ちにくそうに操作したり、突然背中を掻き始めたり。
「だって、身近に観察できるにゃんちゃん(わたし)がいないんだもん」
……寂しさのあまり、看護師さんを猫の代わりに観察して楽しむとは。私には「寂しい」とLINEを送ってくるくせに、病院という閉鎖空間で独自の楽しみを見出すその図太さ。感心していいのか、呆れるべきなのか、妻としては少々複雑な心境です。
効率主義者の「有終の美」
退院へのプロセスも、彼らしい「最短ルート」でした。 4日の夕方に抜糸、5日に師長さんの許可が下り、6日午前10時に退院。当初の予定より4日も早い、計15日間の入院生活。
「予定より早く退院する患者さんは初めてです」という主治医の言葉に、夫はこれ以上ないほど誇らしげでした。短い時間で質の高いアウトプットを出す。若い頃からITの現場で叩き込まれた「効率の美学」が、図らずも病室で証明されてしまったわけです。
「限りある時間」をどう使うか
1月29日までは車もバイクも禁止。首にコルセットを巻き、YouTube三昧の生活が始まりました。リハビリのおかげで4kg痩せたと喜んでいますが、妻としては「退院してからが本当の勝負よ」と釘を刺したい気分です。
けれど、彼の姿を見ていて、ふと考えさせられました。
「日常」が永遠に続くかのように日々を浪費していました。でも、彼が示した「計画性と集中力」は、これからの人生、いわゆる「老い」と向き合う時間においても必要なスキルなのかもしれません。
泣いても笑っても、時間は限られています。 私も、彼のように「質の高い毎日」を計画的に過ごさねば、と。夫の入院というアクシデントは、私にそんな小さな覚悟をさせてくれたのでした。
やれやれ、これにて一件落着……だといいのですが。(完)

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