木の温もりと、子どもの想像力という名の「憩い」

🌲 木の温もりと、子どもの想像力という名の「憩い」

思わず足を止めてしまう、そんな空間がそこにはありました。

私が捉えたのは、子どもたちの木工工作コンクールの入賞作品展。大判の立て看板には、「児童・生徒 木のまち 木工工作コンクール 入賞作品展示会」と、心温まる文字が踊っています。

目的は明快です。「児童・生徒の皆さんに木の良さや物を作る喜びを感じてもらうこと」。このストレートなメッセージに、私は強く共感しました。情報過多でデジタル漬けになりがちな現代において、木という**「自然の恵み」に触れ、自分の手で「無」から「有」**を生み出す喜びは、何物にも代えがたい大切な経験です。

🏠「金賞」に輝く、手のひらサイズのユートピア

特に惹きつけられたのは、「金賞」の札の横に静かに佇む一作品。

**『ツリーハウス』**というタイトルがつけられたそれは、まさに手のひらサイズのユートピアでした。ごつごつとした年輪を感じさせる流木のような土台に、素朴で可愛らしい小屋がちょこんと建っています。木製のはしごが架けられ、手すり付きの吊り橋まで伸びている。足元には松ぼっくりが添えられ、作品全体から森の息吹が伝わってくるようです。

作者は小学五年生の**「平本㊥富美」**さん。

添えられた作品票には、もしかしたら一生懸命書いたであろう、小さな字が並んでいます。この『ツリーハウス』は、きっと彼(彼女)の頭の中で描かれた「秘密基地」の夢が、木片と接着剤を通じて、現実世界に降りてきた姿なのでしょう。

私たち大人は、効率や機能性、そして**「がんばらないと認められない」という見えないプレッシャーの中で、いつしか夢や遊び心を押し込めてしまいがちです。しかし、このツリーハウスには、純粋な「憩い」**の時間が詰まっています。この揺るぎない自然の木々の上で、彼はどんな物語を紡ぎ、どんな風を感じたかったのでしょうか。

🎨 多様な「色」が生まれる場所

会場には、102点の応募作品から選ばれた入賞作品が並んでいるとのこと。

木の色、形、質感は一つとして同じものはありません。そして、それらを扱う子どもたちの個性や発想もまた、十人十色、多様な「色」を持っています。

木工工作とは、木という素材の多様性、そしてそれに向き合う子どもたちの感性の多様性が、見事に融合する場なのです。それはまるで、自然の恵みと人の手によって育つお茶が、飲む人によって様々な「色」を感じさせるように。

この場所で、子どもたちは初めての失敗に唇を噛み、工夫を凝らし、そして完成の喜びを全身で感じたはずです。その一つ一つの体験こそが、彼らの未来を形作る大切な養分となるのでしょう。

私も時折、ふと立ち止まり、このツリーハウスのように、自分にとっての**「憩いの場所」**はどこだろうかと考えることがあります。それは物理的な場所かもしれませんし、心の中の静かな時間かもしれません。

この展示会は、木という身近な素材を通じて、私たちに**「心の豊かさ」「創造性の大切さ」**をそっと教えてくれているように感じました。

 


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です