1月31日、呉でランチ会だった。
「潜水艦てっぱんカレー(辛口)」。給食のような、クジラ肉のカツが乗ったルーたっぷりのカレー。
ハリポタのスネイプ先生に似た友人(熊野出身)が、得意そうに話し始めた。
「熊野と言っても、伊勢近くの熊野じゃないんです。広島に近いかな。地元に産業がなかったときに、熊野から筆の技術を学んで、土地の名前も熊野ってもらったの。書道も優勝者が沢山出てるんだよ」
鼻がピクピク、頬が赤くなって。
「いちばん驚くのは、榊山牛かな。榊山神社とゆかりのある牛。その肉はかなりの高級牛で、150gのフィレ肉が、なんと8,000円!」
私は呆れてしまった。ひゃー、150gが8,000円! 庶民の食べる肉じゃない。
スマホを取り出して、白々とサシの入ったブロック牛肉を眺める。松坂肉に匹敵する肉の厚み、赤々とした塊。一覧を見て更に腰を抜かした。
「ホルモンでも1,500円はする!」
焼き肉屋でも、そんなに取らないよね……
それを上から覗き込んで、もう一人の兵庫出身(交通安全の子供看板そっくり)が冷静に言った。
「でも、神戸牛もその値段だよな」
熊野出身者は、カチンと来た。噛みつくように、
「神戸牛は、イカれてるだけ!」
私はアワを食ってしまった。
そこを新たな仲間が止めて、うやむやになった。
ああ、よかった。
潜水艦カレーを食べながら、私は黙って二人を見ていた。
熊野の人は、榊山牛の8,000円を誇りに思っている。兵庫の人は、神戸牛の8,000円を誇りに思っている。どちらも、自分の地元が一番だと信じている。
そして、相手の地元を認めたくない。
人は誰でも、自分の『当たり前』が一番正しいと思っている。他人の『当たり前』は、イカれているように見える。
私が8万円かけてシミを取ることも、きっと誰かには『イカれてる』のだろう。
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