鯉のぼり雑感

広島県広島市吉和(よしわ)。初夏の風に揺れる鯉のぼり。大小さまざまな鯉が連なっているのを見て、私は昔の人の価値観に思いを馳せる。

かつての日本では、鯉のぼりの数は、家に生まれた子どもの数を誇る象徴でもあったという。たくさんの鯉が泳ぐその姿は、まるで「我が家の子だくさんぶりを見よ」とばかりに、風に向かって自慢しているようだ。幼い兄妹を抱え、「ねんねこしゃっしゃりませ」と歌う子守の子守唄の切なさ。

もちろん、そこには命の賛歌もあったけれど、同時に、子どもたちは労働力でもあった。農作業を手伝い、家業を支える頼もしい戦力。だからこそ、多ければ多いほど良かったのだろう。

今のように、少人数で静かに過ごす家族像とはまるで違うけれど、その時代、その時代に生きる人々の思いが、空に泳ぐ鯉の尾に託されているようで、どこか微笑ましく、また少し切ない。

 


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