美容はモグラ叩き

「シミを取ったんですよ」

内科の先生に話すと、「どうせモグラ叩きだね」と言われた。

「どういう心境の変化? キレイになってふたたび恋愛したいわけ?」

先生の容赦ない突っ込みに、私は反論した。

「急におしゃれに目覚めたっていいじゃないか! どうせあの世までお金を持っていけないんだから!」

先生は笑った。


図星だった。

恋愛、というわけではない。でも、何かが物足りない。

その物足りなさを、八万円で埋めようとした。

夫は「可愛くなるね」と言う。義母も「可愛くなるね」と言う。優しい言葉だ。

でも、優しさだけでは埋まらない何かがある。


先生は言う。「どうせモグラ叩きだね」と。

手帳にTO DOリストを書いた。ハイドロキノンを塗る。日焼け止めを塗る。

最初の一週間はやるだろう。でも、二週間目には忘れる。

シミを取っても、物足りなさは埋まらない。

そして、ケアを続けなければ、シミも戻ってくる。

三ヶ月後、私は先生に「やっぱりモグラ叩きでしたね」と笑われる。

そして、夫は変わらず「可愛いね」と言う。

それでも、今日、私は手帳にTO DOリストを書いた。

物足りなさを埋めるために。

どうせ、あの世までは持っていけないから。


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