結婚――姓にまつわるあれこれ

10月17日の『ウチらのイイブン』珍しい名前めぐる結婚の投稿

FMラジオ番組『ウチらのイイブン』で取り上げられた、結婚後の改名を巡るリスナーの投稿は、現代日本社会が直面する価値観の摩擦を鮮明に映し出しています。

投稿者はご自身の珍しい名前に強い愛着を持ち、結婚後も改名を望んでいません。しかし、結婚相手の男性もまた自分の平凡な名前に愛着があり、改名を拒否しています。女性側は「平凡な名前の夫が譲るべき」と主張し、この問題で婚姻に踏み切れない状況だといいます。

この事例は、個人のアイデンティティとしての氏名への愛着と、日本の伝統的な「家」の概念、そして法律上の夫婦同姓の原則がぶつかり合う構造を象徴しています。名前が単なる符号ではなく、個人を構成する重要な要素であるという現代的な価値観が浸透していることがわかります。

MCが「新しい名前を二人で作れる制度」を提案したことは、現状の「夫婦のどちらかの氏を選ぶ」という二者択一の制度では、個人の強い氏名へのこだわりに対応しきれないことの表れでしょう。

わたしは、この議論から日本の「先祖崇拝が確実になくなりつつある」という、伝統的な「家」の概念の希薄化に対する恐怖を感じています。かつて中国新聞の「みんなの相談コーナー」でも、70代の主婦が次男の入婿婚(妻の氏を名乗ること)を案じる投稿があり、時代の流れとして受け入れる意見の一方で、「新しい名を二人で作る案」も寄せられていました。

現代の夫婦別姓の議論では、改姓による女性の不便さやアイデンティティの喪失が問題視されることが多いですが、この投稿は「男性側も改姓を望まない」「平凡な名前に愛着がある」という、より個人的なレベルでの「氏名への愛着」が結婚の障壁となっている点で興味深いです。

この「夫婦創姓」のアイデアは、選択的夫婦別姓の議論とも関連しつつ、一歩進んで、「家」や「先祖」から切り離された、夫婦による新しいアイデンティティの創造という道を提示しています。これは、個の尊重を基盤とする現代の価値観と、氏名が持つ歴史的・社会的な意味との間で、新しい調和の形を探る試みであると言えるでしょう。しかし一方で、その新しいアイデンティティーを子どもが受け継ぐかどうか、という問題点もあります。結婚という制度にまつわる波瀾万丈の物語は、まだまだ続くようです。

 


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