学校でのわたしのあだ名は、「トイレの百ワット電球」。
クラス男子は大阪人だったから、自虐ネタも混じっていただろう。そこまでわたしは光っていなかったと思う。だって基礎化粧すらしていない。
カレシになった田島正人は、真剣に悩んだらしい。
化粧をしろと直接いうのは簡単だ。実際に、わたしは化粧をしてきた。それを見たレッサーパンダ先生は、茫然として言った。
「パンダやんか」
あんたに言われたくないわい。
しかしアイシャドーを塗りたくり、夜の女のようにケバい化粧をしたわたしは、背の低さも相まってひどいありさまだったのである。
正人は、わたしの顔をじーっと見た。穴が空くほど見た。
笑わなかった。
わたしも、別に恥ずかしくはなかった。そもそも、もとがブスなのを、それなりに工夫したつもりなのである。
ちなみに美術は五段階評価で一だ。顔をキャンパスだと言うのなら、すでにわたしは前衛美術の最先端を走っていることになる。美術的に言うなら、すでに常識を越えているのだ!
もちろん、世間はそれで通用しなかった。
翌日、化粧を落として来たわたしに、彼は上からかがみ込んで言った。
「今日の午後、いっしょに事務のお姉さんのアパートへ行く」
「え、なにしに?」
「化粧の方法を習いに行く。おれにはやり方がわからん」
事務のお姉さんというのは、日焼けうりざね顔の三〇代の飯山さんである。どうやって彼が飯山さんとコネつけたのかは知らないが、彼女はわたしたちをアパートに招いてくれた。
薄青いアパートの階段を上り、飯山さんはお茶を用意して待ってくれていた。しぶいお茶と甘い饅頭をいただいてから、化粧に入る。
まずは、基礎化粧。化粧水、乳液。下地クリーム、化粧用ファウンデーション、口紅、頬紅……。
一時間後には、使用前・使用後みたいに見ちがえた。飯山さんが、ほおとため息をつく。
「素材がいいもんな!」
正人は胸を張った。わたしはムスッとしながら、鏡を見つめた。
化粧をして可愛くなった、それは認めよう。だけど。
こんなの、わたしじゃない。
それは、小学校の時に習字で優秀賞をもらったときに感じたあの感覚に似ていた。
他人からの借り物で勝負していると思ったのだ。

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